トータル・リワード戦略によるエンゲージメント向上

従業員の会社に対するエンゲージメントは、単に金銭面の報酬の充足だけでは高まりません。

働き手の価値観の多様化に沿ってエンゲージメントを高めるためには、仕事そのものの面白さ、働きやすい職場環境、組織文化、能力・キャリア開発、福利厚生、ワーク・ライフ・バランスなども組み合わせた、独自の魅力的な報酬パッケージ(トータル・リワード:Total reward)が求められていきます。

そのため、会社としては、トータル・リワードを戦略的に把握・設計することがエンゲージメントを高める方法といえます。

1. エンゲージメントとトータル・リワードの関係

従業員エンゲージメントとトータル・リワードの間には強い相関関係があり、従業員エンゲージメントは企業の業績や生産性に高い相関があります。

つまり、トータル・リワードが不十分な場合、従業員のエンゲージメントを下げ、企業の業績や生産性を棄損します。このような場合、例えば以下のような兆候が観られます。

生産性の低下
「報われないし、頑張っても無駄」と感じると、仕事に向き合う動機・意欲が削がれ、生産性の低下として表面化します。

欠勤の増加
不十分な報酬によって会社との距離感や疎外感につながります。予定外の休暇や病欠が増えることがあります。

主体性の低下
受け身の姿勢が強くなり、求められている以上をやらなくなります。また、創造的な活動や提案が減ります。

離職率の上昇
ちゃんと報われる機会を他社に探し始めます。転職サイトへの登録や相談が活発になります。

2. トータル・リワード戦略

エンゲージメント向上のため、ひいては会社の業績やパフォーマンスの最大化のため、戦略的にトータル・リワードを設計・提供する仕組みが不可欠です。

a) トータル・リワード戦略の明確化

現行のトータル・リワードの内容として何の目的でどういう内容が存在するのか、その趣旨・狙いも含めて現状を把握します。
特に非金銭的な報酬は、明確な報酬・インセンティブと認知されていないことも少なくありません。
このように冒頭で報酬の趣旨・狙いを棚卸することから始めます。

b) エンゲージメントの診断

金銭的報酬と非金銭的報酬に関して、従業員は何に価値を見出しているのか、不満があるのか、これらを明確にします。
方法としてはエンゲージメント診断を通じ、状況を把握します。

c) ニーズの分析・把握

従業員のトータル・リワードに対するニーズと好みは千差万別です。
世代、性別、国・地域、職種による差異はもちろん、個々レベルでも各報酬項目に対して求めるものは異なります。

d) 業績・パフォーマンスのデータとの紐づけによる深堀り

個人や部門の業績・パフォーマンスと報酬ニーズの所在を組み合わせることで、さらに深いインサイトが得られます。
リテンションが重要な個人や部門のエンゲージメントや報酬面のニーズを把握することは不可欠です。

e) 対応方針・施策の策定

重要度や喫緊性の観点から課題を特定・精査し、対応方針と施策を固めます。
実務の負担を踏まえつつ、可能な限り、きめ細やかな報酬パッケージの提供が重要です。

f) コミュニケーション

トータル・リワードにおける報酬項目を変更する際には、経営目標との紐づけや整合性を明確にしつつ、その内容や趣旨を明確に伝えます。
きちんと従業員が理解していないと、報酬によるエンゲージメント向上の効果が薄れてしまいます。

g) 定期的なアップデート

トータル・リワードの内容は、戦略、組織、従業員ニーズに応じて変化することが重要です。
継続的な軌道修正と改善により、従業員エンゲージメントとパフォーマンスの双方の向上につながります。

トータル・リワード戦略はエンゲージメントとともに、人的資本経営の高度化には不可欠です。

弊社のサービスにご関心やご不明な点がある方は、お気軽にお問合せページからご連絡ください。

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