2023年 労働市場改革|これからの組織・人事の潮流を先読みする

1.組織・人事と企業価値

働き方改革をはじめ、2010年代半ば以降から続く人事の環境変化の対応に追われている人事ご担当者も多いのではないでしょうか。

2020年代になって以降も、例えば、ジョブ型、人的資本経営、シニア人材(50代後半以上の人材)に関する議論が盛んであり、これからも当分は変化が求められる様相にあります。

企業の実態を見ると、状況は各社各様です。

組織・人事の取組みが企業価値の維持・向上を効果的に支えていることが見てとれる企業もあれば、そうでない企業もいます。

両者の決定的な違いは何か、つぶさに見ると、後者の成功事例においては以下の3つの共通点が観られます。

  • 潮流の読み
    将来の変化を見据え、自社の経営や事業にどのような影響を与えるか、どのように対処すべきか、自社なりの読解があり、経営レベルで共有されている。
  • 戦略・ビジョンの確立
    俯瞰的な視座から、経営戦略や中期経営計画と紐づいた組織・人事面の戦略やビジョンが構築されている。
    個別施策がこれら戦略・ビジョンに則って設計・実施されている。
  • 経営陣の深い関与
    経営陣が組織・人事を重要なイシューとして捉えている。人事が経営陣を巻き込んでいる。

2.潮流を読むことの意義

本稿では上記で挙げた「潮流の読み」に焦点を当てていきたいと思います。

あなたの会社の場合、以下の潮流に対して、自社の経営や事業にどのような影響を与えるか、どのように対処すべきか、自社なりの読解があり、経営レベルで共有されている、と自信をもって言えるでしょうか。

是非、ご自身の会社の状況を振り返ってみてください。

それでは、この「潮流の読み」に対する問がなぜ重要なのでしょうか

それは、潮流をどのように読解しているか、これが人材戦略やビジョン、さらには個別的な施策を講じるうえでの前提あるいは基礎となるから、という理由です。

上記の問を換言すれば、組織・人事の方向性を定めるうえでの前提や基礎が整っているか否か、という問になります。

組織・人事の取組みがうまくいってる会社においては、一つ一つの潮流に対して、人事のみならず、経営陣を巻き込んで、経営企画部など関連部署と連携し、時間と労力をかけて影響の分析・評価を行い、そのうえでしかるべき対処を定めています。

潮流(例)会社に与える影響(例)
〇 少子化・高齢化社員の人口ピラミッドが崩れ、知識・技能・ノウハウの伝承が断ち切られる
〇 人材の流動化新卒・生抜きをマジョリティとする制度・運用が成り立たなくなる
〇 人材獲得競争の激化 魅力を感じない職場には人材が集まらなくなる
〇 働き方の多様化リモートワークや兼業・複業など新しい働き方の社員が増える
〇 キャリア自律の高まり社員のキャリア自律を前提とした制度・運用が必要になる
〇 事業ライフサイクルの短縮化  スキルの陳腐化が進み、社員に求められるスキル内容が目まぐるしく変わる

3.特に注目すべき潮流|三位一体の労働市場改革の議論

潮流に関して、政治や経済界を震源地とする規制・ルールの動向について把握しておくことが有効です。

それによって今後起こりうる会社・事業に対する影響を事前に察知でき、計画的・戦略的な対応が容易になります。

人的資本経営や人的資本情報の開示義務については、現在、取り組んでいる最中の方も多いでしょう。

これに加え、直近の動向として、内閣官房「新しい資本主義実現会議」における「三位一体の労働市場改革」の議論は要注目です。

組織・人事に関する規制・ルールや慣行に変化をもたらす重要なテーマが数多く含まれているためです(図1参照)。

図1.「新しい資本主義実現会議」における三位一体の労働市場改革の論点

4.2023年は労働市場改革の年

これら潮流、規制・ルールの動向は、日本企業における組織・人事が変曲点にあること、そのあり方に変革が求められていくことを暗示しています。

そして、上述の内閣官房「新しい資本主義実現会議」が掲げるとおり、2023年はまさに労働市場改革の節目となる年になることが見込まれます。

これまでのように、従前の人事・労務の慣行に精通していれば、人事ご担当者として合格といえた時代は終焉を迎えつつあります。

これからは、人事に精通しているだけでは不十分であり、人事ご担当者としても、マクロな潮流から、ミクロな個別具体的な取組み領域まで、まさに経営者のごとく、俯瞰的な視野を有することが求められる時代に移りつつあります(図2参照)。

図2.組織・人事の俯瞰図 

このような状況下にある人事ご担当者にとって有益な情報をこれからも積極的にお伝えしていきたいと思います。

(以上)